
どうも、ケアニンあがちょ(@careninagacho)です。
認知症の症状は人それぞれですが、自宅で介護している家族が苦慮している症状として徘徊があります。
過去にもニュースでも聞いたことがあると思いますが、徘徊行動により交通事故に合ってしまった人もみえます。

認知症の人を介護している家族としては、他人事ではないですよね・・。そこで今回は、徘徊に関わる事故を防ぐための対策を考えていきたいと思います。

認知症になると起こりうる行動⁈

身近に認知症の人、認知症らしき人はいますか?
認知症高齢者は超高齢社会の中で、今後も増え続けると言われています。
中核症状とは
認知症になると、主には少し前の事を忘れてしまう、短期記憶障害を中心として、今いる場所が分からなくなる見当識障害、物の理解が出来なくなる失認などなど、中核症状と呼ばれる症状が見られ始めます。
そして、中核症状が現れる事で、認知症の人は不安になったり、イライラしたり、悩んだり、混乱するなど、行動・心理症状と呼ばれるさまざまな反応に変わっていきます。
行動・心理症状とは
主にどんな症状があるかを知りましょう。
症状が顕著に表れる人もいれば、ほとんど確認されない人まで、一概に認知症の人が同じように症状が出る訳ではありません。

★徘徊(はいかい)
「目的はあると言われますが、ウロウロと室内や外を歩き回っている様子を言います。徘徊行動により、外に出て事故に合うケースが報告されています。」
★異食(いしょく)
「食べられる物ではないが、口に運んでしまう行動。例えば石鹸や観葉植物など。本人には食べ物に見えている可能性あり。危険のない様に住まいの環境整備が重要。」
★暴力(ぼうりょく)
「感情コントロールがきかず、行動に移ってしまう状態。介助中に殴られる等の暴力行為を受けた事がある人も少なくないのでは⁈」
★不潔行為
「排尿や排便などの汚染物を触ったりする行為です。」
★物取られ妄想
「自分の物(財布や服など)が取られたと思い込み、特定の相手を犯人だと決めつける事が見受けられます。同居人の嫁など、犯人にされやすい傾向にあります。多くは、自分でしまった場所を忘れてしまう事で起こります。」
上記以外にも、さまざまな症状はあります。
認知症の進行状況、脳がダメージを受けている箇所、生活環境などの要因にても症状の表れ方に変化がきたされるようです。
なぜ行動・心理症状は起きるのか?
認知症については、こちらの記事で詳しく説明しているので参照ください。
認知症の症状には中核症状と行動・心理症状があります。
以下のようなイメージです。

認知症になると基本的には、物忘れを中心とした記憶障害が起こり始めます。
記憶障害は、ほんの数分前の事、人によっては数秒前のことまでも忘れてしまう短期記憶障害がみられます。
記憶障害がみられる人は少し前の事を忘れてしまうため、自分がとった行動を忘れる傾向があります。
食事した事、薬を飲んだ事、誰かと会って話をした事を忘れるなど・・
実際には食事も食べ終わっているにも関わらず、本人の頭の中では食べたことがリセットされます。
そうなれば、

「食事を出してもらえてない。うちの嫁は何もしてくれない!」
そうやって思い込んで被害妄想を膨らませてしまう事も考えられます。
つまり、被害妄想や徘徊などの症状については、中心にある記憶低下などの中核症状が引き金となり、不安や混乱、ストレスを生むことで、さまざまな行動・心理症状に繋がってしまう訳です。


徘徊とは
行動・心理症状の中で徘徊という症状があります。
徘徊とは、あてもなく、うろうろと歩き回ること。「街中を徘徊する」
出典:goo辞書
辞書では、あてもなく、目的もなく歩き回っていると示されています。
入居施設やデイにも、フロアをウロウロと歩いていたり、ソワソワと落ち着かない御利用者を見たことはあると思います。
この人たちは、果たして目的もなく歩き回っているのでしょうか?
いやいや・・
介護のプロの方たちは、決してそんな風に感じていないですよね。
一般に徘徊と呼ばれる行動の裏には、落ち着かない理由や意味があるとされています。
例えば、見当識障害があり、今いる場所の理解が出来ない人がおかれている状態を想像してみて下さい。

「ここは、どこだろう?見覚えがない人が話かけてくるし、何だかこわいな。早く家に帰りたいな・・」
自分自身がそんな風に感じれば、おのずと落ち着かずソワソワする気持ちになることは想像できますよね。

「玄関はどこだろう?こっちかな、あっちかな・・また、知らない人が声かけてきた(゚Д゚;)困ったな・・」
つまり、中核障害により見当識が低下していたり、記憶力低下が進んでいれば、場所の理解ができず、自分自身が施設に入っているという現状理解が追い付かず、その場から離れたいという気持ちからウロウロする行動を見て、「(目的もなく)徘徊している」と決めつける訳です。
よって、徘徊行動とは、認知症の人が感じている世界において、
目的はある!
それが答えです。
徘徊による不安
徘徊には目的・理由がある事を理解した上で、徘徊行動により事故に繋がるケースもある事を知っておきましょう。
2007年には、自宅生活していた認知症高齢者が家族が気づかない内に一人で外出し、電車に引かれ亡くなったという痛ましい事故が起きました。
事故で電車のダイヤが大幅に乱れた事により、JRは大きな損害を被ったとして、家族である妻に対して損害賠償請求を行いました。最終的には、当時の状況からして監督義務者に該当しないと判断され棄却されることとなりました。
大きく取り上げられたニュースなので、覚えている人は多いかと思います。
しかし、事故としてニュースには上がらないが、徘徊による事故は少なくはありません。
そして、徘徊により行方不明となってしまったケースも増加傾向にあると報告されています。

1年間で1万7千人以上の人が、何らかの理由(認知症による徘徊行動以外に、家出なども含む)に行方不明者として届け出されています。
多くは届け出のあった当日に居場所確認、発見されていますが、中には全く見つからずに未だに行方不明者となっているケースや、数か月後に遺体で発見されたケースなど、辛い場面もあるようです。
徘徊で外に出ていくケース
徘徊には目的があり、一人で外に出来ていく場合に考えられる理由としては、
◎見ず知らずの場所に居ると感じる事で、不安となりその場から離れようとする。
◎記憶障害が根底にある事で、記憶が昔(育児している頃)に戻り、「早く帰って子供にご飯を作らなきゃ」と思ってしまう。または、仕事に行こうとするなど。
※特に夕方に出ていこうとする事が多いとされ、これを夕暮症候群と呼びます。

「1人で外に行くのは危ないよ。」
「今日はココで泊まっていってください」
入居施設では、そんな風に出ていこうとされる人への声掛けをしたスタッフも少なくないのではと思います。
でも、認知症の当事者としては、

「早く家に帰らないと、子供がお腹すかせて待っているのに、何でこの人は私を止めるの⁈子供が困るじゃないのっ!」
「また、知らない人が声かけてきた・・こんな来たこともない所で泊まっていくのは、何だか不安だし嫌。家に帰らなくっちゃ」
こんな風に頭の中では困惑して、混乱しているのかもしれませんね。
実態と認知症の人が感じている世界とでは、乖離がある事が多いので、「あなたはココに住んでいるんですよ。ココに居て下さい」なんて言って説得をしようとしても、なかなか納得されないケースは多いですね。
声掛けのポイントや認知症の人への関わり方の基礎を抑えたうえで、状況に応じた声掛けや対応を臨機応変にできるようになりたいものです。
徘徊対策

では、徘徊による事故を未然に防ぐには、どんな対策を講じる必要があるのでしょうか。
施設では安全配慮義務がある
入所施設やショート利用中、デイサービス利用中など利用者をお預かりしている時間は、危険を回避して安全に過ごしてもらう為に安全配慮義務が課せられます。
安全配慮義務に関しては、介護施設側にその事故の予見可能性があるか否かが重要です。
しかし、常に外に出ていこうとされる徘徊行動、帰宅要求が強い人が入所している場合は、「出て行ってしまうかもしれない⁈」という予見可能性はありますので、対策をしていないと配慮義務違反に該当するかもしれません( ;∀;)
予見する事が難しく、事故を防ぐことが出来ない場合については、介護施設側には安全配慮義務違反は認められずに該当しません。
離設(エスケープ)のリスク
過去に離設(エスケープとも言う)した利用者を探しに行った事はありませんか?
夜間帯など時間帯によっては、直ぐに探しに行けるスタッフも少ないでしょうし、特に冬場であれば時間が経てば経つほど命の危険リスクも高まりますので、早急な対応が必須となります。
❶日中夜間のフロアの見守り体制
❷離施(エスケープ)があった場合の連絡体制や対応のフローチャート作成(例えば、歩行レベルにもよるが、高齢者が時速○○キロで歩いた場合で半径○○距離までが捜索対象ライン等も参考にすると良い)
❸外に出れる動線の施錠の確認
❹センサーや玄関付近の監視カメラ等の設備の必要性の確認
❺特に要注意の対象者がいれば、家族への説明・同意の上でGPS利用を検討
❻事前に対象者の個人情報(写真や特徴)を1枚にまとめておき、万が一の際には警察に提示したりする為の準備
普段よりKYT(危険予知トレーニング)を活用したり、マニュアルやフローチャートを作成しておき、全てのスタッフが理解と認識をしておくことが重要ですね。
GPS


GPSって言うと、「人の動きを監視するみたいで嫌」と思われる人もいますが、認知症による徘徊、帰宅欲求が強い利用者や、過去に離設があった対象者への対応があやふやで、対策が打てていない間に離設事故が発覚すれば、安全配慮に欠けるとみなされます。
現状と今後のリスクを加味した上で、家族の同意のもと、徘徊により外に出ていくケースには、GPSの活用を検討しましょう。
GPSは本人が身に付けていないと意味がありませんので、対策としていろんな商品が出ています。
◎お守り型:普段から持ち歩くカバンやバック、杖に結び付けておくタイプ。 ◎靴底タイプ:履いても気づかれないように、靴底が空洞になっており、そこに入れおくタイプ。 ◎リストバンド型:腕時計のように、普段より腕に付けておくタイプ。
デメリットとしては、バッテリーを使うタイプは充電が必要となるので、万が一の際にバッテリーがなくて意味がない・・・なんて事にならないように、普段から気にしておかなければならない事です。
CUBE
自宅の玄関先などに置いておくだけで、見守りができる商品です。


認知症介護をしている家庭
自宅で認知症の人を介護している場合、家族の仕事や事情により、ずっと見守れる家庭は少ないかと感じます。
その為、介護保険サービスを利用して多くの人はデイサービスへ日中は行ってもらったり、ヘルパーに来てもらったり、ショートステイで夜間対応をお願いする場合がある訳です。
それでも、自宅での24時間365日見守れる体制を作る事は難しいため、そこまで求める状況であれば入居施設に頼る必要があるかと思います。
とは言え、徘徊による一人外出は不安だが、「入居はまだ考えていない。何だか可哀そう・・」という家族に意向もあります。
そんな場合は、見守り機能のある商品を検討してみて下さい。
みまもりCUBEは、家庭用のコンセントに差し込むだけで、遠方の家族でも様子を見守ることが出来る商品です。バッテリーではないので、充電の必要もありません。
■コンセントに差し込むだけの簡単な設置
■事前に家族の声を録音しておいたスピーカー機能で、外に出ていく高齢者を呼び止めてくれる。
■家族複数人の携帯にお知らせメールが入り、画像にて外に出て行った時間や服装が分かる。

徘徊行動により、外に出ようとすると感知して携帯にお知らせが入ります。

玄関から出ようとすると、あらかじめ録音しておいた家族の声で呼び止めてくれます。

それでも、外に出て行ってしまったら、その時の服装や外出時間をメールでお知らせしてくれます。
遠方の家族や仕事中の家族でも、通知を受け取り変化が確認することで、映像を記録していますので、外出した時の服装の特徴などを元に探すことが可能です。
その為、万が一の時はお近くの親族や近隣住民、警察に協力を要請する際に役立ちます。
地域への理解
認知症の高齢者が居る家族の考え方で違いもありますが、家族の中には認知症の事は隠しておきたいと考える人もいます。いくら隠そうとしても、地域住民は薄々感ずいている事が多いとは思いますが・・。
それぞれの家庭の事情ですので、何が正解で不正解なのかを決める事ではありません。
しかし、認知症により落ち着きのない様子が顕著になり、徘徊行動が目立つようになってくる段階では、一人で外に出て行ってしまうリスクが高まります。
そうなれば、家族の見守りの目だけでは限界が出てきます。
そういった中では、地域住民の目、見守れる体制が重要な役割りを果たします。
徘徊による身元不明や交通事故などの事故を未然に防ぐ可能性を高める為にも、認知症の理解や徘徊対応を理解を求める取り組みも大切です。
声かけ実施訓練
それぞれのお住いの市区町村によっては、徘徊高齢者への声掛け訓練を行っている所もあります。
声掛け訓練とは、認知症役の人が街並みをフラフラと歩いているところに、参加者が声掛けをする際に、どんな事に注意するべきか、どんな声掛けをすると安心されるのか、発見時の連絡体制などの確認等を行います。
ここで難し問題が出てきます。
訓練中であれば認知症役が分かっているので安心して声を掛けられますが、実際には『認知症』っていう名札やマークを付けて歩いている訳ではないので、

あの人、フラフラと歩いているけど認知症の人なのかなぁ・・徘徊で外に出てきてしまったなら困るだろうけど、違っていたら怒られるだろうし・・
そんな風に感じて、結局は声を掛ける事を躊躇してしまうでしょうね。
では、徘徊高齢者かもしれない⁈というポイントは、どんな点に注視すると良いのでしょうか。
■信号を気にせず歩いてします。赤信号でも突っ切ってしまう。
■横断歩道や道路端を歩かず、道路中央に寄りながらフラフラと歩いている。
■服装がチグハグ(パジャマを着ていたり、靴の左右が別々など)。
■季節感のない服装をしている(夏でも厚着、冬でも薄着など)。
■独り言をブツブツ言いながら歩いている。
■周りをキョロキョロと見ながら、不安そうに歩いている。 etc
あくまでも参考程度にして下さい☝
認知症サポーター養成講座
認知症キャラバン・メイトという一定の知識を有している人が、地域住民や学校生徒、一般企業の職員などに向けて、認知症の理解を求める取り組みをしています。
脳の病気である事、その影響で起こる記憶障害を中心とした中核症状、そして中核症状がある事で不安になったり落ち着かなくなることで表れる徘徊行動などの行動・心理症状を説明していきます。
科学的な難しい事を把握する必要はありませんが、認知症の人が何に対して不安なのか、困りごとや感じていることなど、その人の身になって考えてみる時間にして頂ければ幸いです。
まとめ

ここまでお読み頂きありがとうございました。
この記事では、
❶徘徊行動はなぜ起こるのか。
❷徘徊行動に対しての対策。
をお伝えしてきました。
1人で外に出ていくこと自体は、なんら不思議な行動ではなく、外出する事は人として当たり前の行動です。
ただ、認知症の進行状況によっては判断力や認識不足による危険が増加したり、居場所の把握も不足して自宅に帰れなくなるケースも出てくることは確かです。
その為、一人の人としての尊厳は十分に守った上で、危険が回避できるような支援や心掛けが重要なポイントとなります。今一度確認しておきましょう。
コメント